土地の有効活用

 70年代後半頃に東京の中心商業地に端を発した先般の地価高騰は、大都市に住むサラリーマンの持家取得を絶望的にし、かつ、持てる者と持たざる者の資産格差を埋め合わせられないほどに拡大しまた公共事業の用地取得を困難にしました。こうした状況のなか、土地対策が各方面で緊急の課題としてとりあげられるようになったのは周知のところです。
 一口に土地対策といっても、どういったことをやればよいのでしょうか。政府や各関係団体が好き勝手に政策を実施したのでは必ずしも国民の意志に洽ったものとは言えません。そこで土地対策を実施する前提として、国民の土地に対する共通認識を確立する必要が生まれました。平成元年12月22日に公布施行された土地基本法は、こうした考えに基づき今後の土地対策に関する方向性を明示した、言わば土地の憲法とでもいうべきものです。

土地の買い方ガイド

 土地基本法は先にも述べたように土地についての国民の共通認識の形成を目指して制定されたものですから、その中核をなすのは、土地についての公共の福祉優先、適正な利用および計画に従った利用、投機的取引の抑制、価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担という四つの土地についての基本理念です。以下、順に見て行きましょう。
 ・土地についての公共の福祉優先 - 日本では憲法第29条第1項により、私有財産制が保証されています。しかし、土地は一般の財とは異なり、国民にとっての限られた資源であり、国民の諸活動にとって不可欠の基盤であります。こうした土地の公共性に鑑み、土地については公共の福祉が優先することとしました。
 ・適正な利用および計画に従った利用 - 日本では土地の利用については所有者の自由に委ねるという考え方が一般的です。しかし土地は適正に利用されてこそ国民全体の利益の増進が図られるものであることから、適正な利用がなされているかどうか常に問うべき必要があることにしました。つまり所有から利用へという土地についての哲学の変更を訴えたわけです。
 ・投機的取引の抑制 - 土地の投機的取引は地価をつりあげ、土地の遊休化を促すなど様々な悪影響をおよぼすものであるため、土地を投機的取引の対象としてはならない旨を宣言しました。
 ・価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担 - 地価の増大は持てる者と持たざる者との資産拡差を拡大させ、不公平感を招くといった問題を生じさせています。よって公平の確保に資するとともに、土地の資産としての有利性を減殺する観点から、利益に応じた適切な負担が確保されるべきことを基本理念として明示しました。
 本法は、この基本理念を踏まえて、政府、地方公共団体、事業者、国民の責務を定めています。さらには、こうした理念の普及や施策の基本的事項等を審議する土地政策審議会の設置が規定されています。
 また本法は土地に関する最も重要な指針であるため,さまざまな法律の改正にも影響を与えています。平成二年の大都市法、都市計画法、建築基準法の改正、平成三年の生産緑地法の改正および地価税の導入をはじめとする税制改正等、すべて土地基本法のかかげた基本理念を基礎としたものといえるでしょう。
 民法上の原則からしますと、自分が所有する土地をどのように利用しようが自由なはずです。
 しかし、国は数多くの法律を作って土地や建物の利用や売り買い に対して多くの制限を課しています。そして、そのような法令上の制限に関する法律の中で中心的なものとして都市計画法があります。
 都市計画法は読んで字の如く都市を計画的に作るための法律です。では,なぜこのような法律が必要になるのでしょうか。
 日本は国土に対して人口が非常に多いのでみなが自分勝手に家やビル、工場などを建てると円満な住居生活が害されてしまいます。
 そこで都市は計画的につくる必要がでてきます。この計画的な都市づくりを目的として作られたのが都市計画法です。
 では,以下都市計画法の内容を具体的に説明していきたいと思います。
 まず、都市計画区域の内と外に大きく分けることができます。
 都市計画区域とは,都市を計画的につくるべき区域、つまり都市計画法によるさまざまな手段、制限がくわえられる区域です。
 逆に、都市計画区域外は、都市を計画的につくる必要がない区域、つまり都市計画法の制限を加える必要がなく、自由に開発してもよい区域をいいます。
 そして、さらに都市計画法は都市計画区域の中を大きく2つに分けました。これが市街化区域と市街化調整区域です。
 市街化区域とは、すでに市街化を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいいます。また,市街化調整区域とは,市街化を抑制すべき区域のことをいいます。
 そして,都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に分けることを線引きといいますが、すべての都市計画区域について、この線引きがされているわけではありません。
 さらに、市街化区域の中で建物の用途によって細かく地域割りしたものを用途地域といいます。そして市街化区域には必ず用途地域を定めなければなりません。しかし,市街化調整区域については、原則として用途地域は定められません。
 では、未線引き地域についてはどうかというと、用途地域を定めても定めなくてもどちらでもいいということになります。
 それでは、いまみた12種類の用途地域で十分かというとそうではなく、それ以外にも特別用途地区というものを定めました。
 特別用途地区は用途地域の中にしか定めることができません。特別用途地区には10種類があります。
 特別工業地区、文教地区、小売店舗地区、事務所地区、厚生地区、娯楽、レクリエーション地区、観光地区、特別業務地区、中高僧階住居専用地区、商業専用地区
 さらに、平成9年の都市計画法の一部改正により、都市計画、高層住居誘導地区を定めることができることとされました。
 この高層住居誘導地区とは、住居と住居以外の用途とを適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するために定められたものです。
 その他、用途地域の中に限って定めることができるものとして高度地区、つまり、高い低いに関係なく、高さをそろえましょうという地区と高度利用地区、つまり高度利用を増進しましょうという地区があります。
 今まで説明したものと違って、市街化調整区域の中でも未線引区域の中でも行うことができる都市計画のメニューがあります。防火地域・準防火地域・風致地区がそれです。
 また、これまでは、都市計画は、こういう建物は建てられないというような消極的なものを説明してきたわけですが、その他積極的な都市計画として、都市施設、市街地開発事業、地区計画といったものがあります。
 不良な市街地の形成をなんとかおさえようとして,開発行為の規制が都市計画法の中に盛り込まれています。つまり,建物を建てるための土地の整地(宅地造成工事など)を行うためには、原則として都道府県知事の許可を必要としました。
 開発行為とはまず、都市計画区域内の行為であることが条件となります。そして開発行為を定義づけてみますと、主として建築または特定工作物の建設を目的とした土地の区画形質の変更ということになります。
 ここにいう特定工作物は2種類に分けられます。
 第一種特定工作物 - コンクリートプランととかアスファルトプラントなどがそれにあたります。
 第二種特定工作物 - ゴルフコースや野球場やテニス場などです。しかし、ゴルフコース以外のものは,1ha未満の場合は許可不要とされています。
 法律は、都市計画が決定されると、それに応じて一定の行為を制限しています。このような制限のことを都市計画制限といいます。実は開発行為の規制も都市計画制限の1つなのです。
 これには、都市計画施設の区域内や市街地開発事業の施行区域内での建築制限、都市計画事業制限、市街地開発事業等予定区域内における制限等があります。
 この都市計画法を受けた関係にある法律が建築基準法です。
 例えば,防火地域や準防火地域の指定を受けた場合,その指定を受けた地区は、火事を未然に防ぐようにするために指定されているわけです。しかし、どのような建物を建てたら火災を防げるかは具体的に都市計画法で定められていません。そこで「何階建以上は木造以外に」などと詳細な規定をおいているのが建築基準法なのです。
 では、なぜこのような法律が作られたのでしょうか。防火地域で皆が勝手に木造建物を建てた場合、もし火事が起これば、延焼して大災害をひきおこす可能性があります。
 そこで建物等に制限を課しているのが建築基準法なのですから、結局、国民の生命、健康、そして財産を守ることを目的として制定された法律であるといえます。

建築基準法の内容
(1)用途規制 - 例えば、映画館や風俗営業が住居地域にあってはならないのは常識です。用途地域ごとに、こういう建物は建てられるが、こういうのは建てられないといったことを決めたのが用途規制です。
 (2)接道義務 - 都市計画区域において、建物の敷地は最低2m以上建築基準法上の道路に接していなくてはなりません。
 (3)建ぺい率 - 建物を敷地全体に建ててしまうと、風通しや日照の他に火事の際の延焼等、様々な問題がおこります。そこで各用途地域ごとに建ぺい率を定めました。
 (4)容積率 - 都市計画区域にそこらじゅう高いビルが建ってしまったら、道路は混雑し上下水道もパンクしてしまい大変なことになります。そこで用途地域と前面道路に関して容積率の規制を設けました。
 (5)日影規制 - 住んでいる家がビルの影になって日が当たらないのは健康に悪いのは言うまでもありません。そこで、用途区域ごとに建物の高さ等の制限を設けました。
 (6)防火地域・準防火地域の建築規制 - 当然のことですが、防火地域、準防火地域は、火事による延焼を防ぐために設けられました。
 この具体的制限が定められています。
 用途規制のところに立ち戻って考えてみましょう。「パチンコ屋は住居地域に建てられる。」これは全くの正解です。しかし、これではまずい、もっと厳しい規制が必要だと考えるのは私だけではないでしょう。
 そこで建築基準法は「建築協定」という制度を設けました。そこに住んでいる人たちが話し合いをして「こういう建物は建ててはいけない。」といった建築基準法による制限を定めるわけです。
 ここまで、建築基準法についてさまざまな規制を列挙しました。しかし、こうした規制もみんなが守ってくれなければ意味がありません。そこで、どうやって守らせることができるかを考えてできたのが「建築確認」という制度です。つまり、建築士が事前に「ここにこういう建物を建てたいのだが」と建築主事に届け、建築主事が建築基準法に照らし合わせて確認し、違反でなければ確認を出すといったものです。
 どんな建築物も建築基準法に違反してはいけません。ただ、すべての場合に確認が必要なわけではなく、一定の場合に建築確認が必要であるとしました。
 土地区画整理法は,土地区画整理事業に必要な事項を規定しています。そこで、土地区画整理事業とは何かというところから始めましょう。つまり、土地を整理して、道路や公園などがよく整備された街づくりを行おうとするのが土地区画整理事業です。
 土地区画整理の方法は大きく分けて、減歩と換地処分の2つの方法があります。
 減歩とは事業を行おうとする土地の各所有者から同じ割合ずつ土地を提供してもらい、その土地を道路や公園にしたり、事業の費用にあてることを言います。
 換地処分とは区画整理で道路や公園などを作る際に、換地計画に従って、今まで使用していた土地から別の土地に移ってもらうことをいいます。

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