間取りの条件

 間取りは条件によって考え、つくるものです。条件は間取りに形を与えるもので、条件が違えば間取りは変わります。ですから、間取りを考えるためには、まず条件を整理しておかなければなりません。
 間取りを考えるための条件は、大きく分けると、外的条件と内的条件のふたつに分けられます。
 外的条件というのは、なんとも動かしようのない条件です。家を建てるための敷地が決定した段階で、この条件は既成事実となってしまいます。敷地とて気に入らなければ買い替えることができるのだから、動かしようもない既成事実とはいえないのではないか、という人がいるかもしれません。その通りですが、それは既成事実をいちどゼロにして、また新しい既成事実をつくることにすぎません。
 以前このようなことをいう人がいて当惑させられたことがあります。その人は、まだ敷地が決まっていないけれど、理想の間取りを考えてみてくれませんか、というのです。敷地は大きかろうと小さかろうと、具体的な敷地条件をつきつけてくるもので、それは間取りを拘束します。しかしその拘束がなければ間取りは形をなすことができません。無条件の条件はないのです。
 外的条件は既成事実として間取りを拘束しますが、拘束されるから自由に間取りができないとか、よい間取りができないというのは逃げ口上です。外的条件の拘束は、たとえてみれば、凧の糸のようなものです。凧は糸によって拘束されていますが、自由になりたいといって糸を切ってしまったら凧は落ちてしまいます。凧が高くすばらしくあがるのは糸による拘束があればこそです。凧は間取り、糸は外的条件です。

・敷地の決定で定まる環境的条件
 大きくは自然の条件、環境の条件、そしてもっとも直接的な敷地条件があります。法的条件は   敷地条件のひとつでもあります。

・家を建てるための技術的条件
 これは特定の家を建てるための条件ではなく、家を建てるために活動している社会的な生産態勢です。どんな材料が流通し、どんな工法でだれがつくっているかということです。

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 間取りの内的条件は自分自身で自由に決めることのできる条件です。ひと言でいってしまえば、どんな家が欲しいかということ。ですから人によって違います。こんな家を建てなさいという資格はだれにもありません。自分自身がよければそれでよいのです。そうであれば、もう内的条件について書く必要は全くないわけですが、自身で内的条件を整理されるときの参考として、少し分析しておきます。

 内的条件は次の三つに分類できます。
・家を建てるための資金量
 まことにアケスケで、ミもフタもない言い方ですが、家を建てるのは家を買うことですから、どのくらいの広さでどんな仕様程度の家が買えるか、まずその目安を立てなければなりません。

・長期的な見通しも含めた家族構成
 長期的といっても見通せる限度がありますし、ハプニングはつきものですから、完璧を期すことなど無理にきまっていますが、今のままということはないはずです。その家にだれが住むのかということ。

・どんな生活をその家に期待するか、その内容
 その家に住む家族がお互いにどんな生活の仕方をするのかです。たとえば、家族スペースは椅子がよいのか畳がよいのか、台所ラインはどんな機能がいるか、客を泊めるときぱどうするかなど、内容は多岐にわたります。

 間取りは外的条件と内的条件をつき合わせて形にする作業です。条件は矛盾に満ちています。たとえば、欲しい部屋を金部とると家が大きくなりすぎて資金が足りない、資金が足りても建ぺい率や容積率の制限で大きい家が建てられない、制限内で大きな家が建てられるがそうすると日照条件が悪くなる、など間取りは条件の矛盾との格闘です。矛盾を折り合わせるために足して二で割ることもあります。一方を捨てることで一方をとることもあるでしょう。しかしいずれにしても、まず条件を明らかにしておく必要があります。
 外的条件は動かしがたい条件ですから、調べればわかります。しかし内的条件はそうはいきません。これだけの部屋を、欲しい広さでとると、いったい家が何坪になるのか、よくわからないはずです。一方、資金量からくる制約が内容の希望条件とは無関係にあって、家全体の坪数をおさえています。
 希望する部屋を欲しい広さでとって間取りするといったい何坪になるか、それは間取りをつくってみればわかります。しかしそうしてできた間取りに無駄があってその広さなのか、もはや切りつめることができないほどなのか、その判断は慣れてこないと無理なものです。しかしたいていの場合は、資金量からくる坪数の限度を越えているものですから、その限度内になんとか入らないものかと四苦八苦するのですが、やはり入らないものは入らないので、こんどは部屋数を減らすとか、部屋の広さを減らして出直すことになります。間取りというのはトライですから、やってみなければわからないという面はあります。しかし素人間取りでひとつの結論を得るには、迷路だらけで、無駄ともいえる時間を費やさなければなりません。そこでどんな方法で間取りに入っていったら迷路を通らなくてすむか、大枝から入ってゆく方法を述べることにします。
 まず必要な部屋を列記し、その広さを書きこんでみます。広さぱ畳数であらわします。部屋をかぞえる場合、玄関・廊下・階段・風呂場・洗面所・便所・ユーティリティ・台所・納戸などは全部無視して、居室としての部屋のみとし、押し入れ・床の間・物入れなど部屋に付属したスペースも全部無視します。居室としてかぞえる部屋は、居間・食堂・座敷・茶の間・寝室・子供室などです。ダイェングキッチンは台所の一種ですが、居室に含めます。
 リストアップができたら、その畳数を集計します。そして数を半分にします。つまり坪数に直したわけで、これが希望条件の家の居室の面積です。この数字に一・六から二・〇の系数をかけると、家全体の坪数がつかめます。一・六ないし二・〇の系数のどれをえらぶかは、居室以外で無視したスペースのゆとりの程度で違ってきます。一・六にすると、納戸もとれず台所・水まわり・玄関・押し入れは最小限で、廊下・階段もギリギリに前線部分を縮小したプランになります。一・六以下でもできないことはありませんが、便所や洗面所の人目が居間やDKに露出するような、建売住宅的なプランになり、程度がおちてきます。一・六のプラ ンでも相当な努力を要します。それが一・七になると少しゆとりが出て、一・八になると納戸や書斎ぐらいはとれます。一・九から二・〇になると、縁側とか広縁ができたり玄関まわりもゆったりします。二・〇以上にもなって居室の広さが同じなら、ムダの多いプランといえましょう。
 この方法でやると、非常に楽に家全体の坪数がつかめます。その坪数を資金量で可能な坪数とくらべ、多すぎたら居室の数を減らすか、広さをつめるか、それとも系数をおとして居室以外にシワよせするかして合わせてゆくのです。ここまでできたら、今度はそれを一階と二階に分割するのです。居室のリストで一階にとりたい部屋と二階にする部屋を分け、それぞれに先はどの系数をかけます。これで一階と二階の面積分割ができたわけですが、多分コンマ以下の端数がついているはずです。そこで整数になおしてあつかいやすくするために、一階の坪数のコンマ以下は切り上げて、さらに一を足して一階の坪数とし、二階の坪数のコンマ以下は切り捨てて、さらに一を引いて二階の坪数とします。なぜこんなことをするかというと、たいていの場合、一階には玄関や水まわり・台所などがあって、居室以外のスペースが多いので少しふやしてやり、その反対に二階にはそうしたスペースが少ないので減らすという手加減をしたのです。
 以上で間取りを始めるための枠づくりができました。この枠にはめこむように間取りするのです。枠といってもこれはまだ数字だけにすぎないので、どうあつかって枠にはめこんでゆくかはいくつかの間取りをあげて、居室の坪数とそれ以外の坪数の割合が、系数の違いによりどのくらいになるかを知るバロメーターにしました。これらはムダのない間取りですから、この程度に入れば及第という指針になります。

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